比較的悪性度の低いまたは病巣の小さい前立腺がんには脂質制限が有効 2021年09月28日
「脂質で増殖する前立腺がんには脂質の過剰摂取に注意! 前立腺がんに欠かせない食生活改善。予防、再発・転移防止にも効果」
https://gansupport.jp/article/cancer/prostate/16917.html
というレポートがインターネットに出ていた。
「前立腺は体内の臓器の中でコレステロールの含有量が一番多いのです。前立腺自体もコレステロールを産生しているし、体中のコレステロールが集まってくるところでもあります。つまり、体内の脂質の吸い取り紙のような臓器ですが、前立腺がんはまさにこの脂質を利用して増殖するタイプのがんなのです」
「実際、前立腺がんが多い国として挙げられるのはアメリカ、北欧、オーストリアなど、肉食中心で乳製品や脂肪を多く摂取する食習慣の国々です」
「比較的悪性度の低い、または病巣の小さい前立腺がんの患者さんに生検を行う際、どんな遺伝子が発現しているか調べておき、食事の改善を行い、運動とカウンセリングを行いました。食事はいわゆる地中海式ダイエットといわれるもので、肉を減らして魚を摂り、野菜をたくさん食べる。オリーブ油を使って、ラードやコーン油を使わないというものです。そして、ストレスを減らすために運動をしてもらい、カウンセリングを実施しました」
「1年後に再度生検をしたところ、がんを発現させる遺伝子が減り、PSA値が下がっていたのです。つまり、前立腺がんと診断されたあとでも、食事の改善と運動、ストレス・マネジメントが非常に大事ということです。」
では前立腺がんが好む「脂質」とは何か? 「オリーブ油」が良くて、「ラード」や「コーン油」が悪いのなら、オメガ9の脂肪酸はOK、オメガ6の脂肪酸はダメ、飽和脂肪酸もダメ、ということになる。このあたりをもっと詳しく調べた報告を探しているが、なかなか見つからない。
次のような報告が見つかった。
「血中脂質値の異常は前立腺癌再発の予測因子か」
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/news/201410/538828.html
これによれば、「脂質」というのは、具体的には、血中のトリグリセリド(中性脂肪)、総コレステロール、HDLコレステロールであるようだ。中性脂肪と総コレステロールは少ないほうがよく、HDLコレステロールは多いほうがよい。
私の解釈:
「比較的悪性度の低い、または病巣の小さい前立腺がんの患者さんに生検を行う際、どんな遺伝子が発現しているか調べておき、食事の改善を行い、運動とカウンセリングを行いました」とあるように、悪性度の低いまたは病巣の小さい、おそらくはホルモン感受性の前立腺がんを対象に試験をしているようである。このような割りとおとなしい前立腺がんに対しては、脂質制限ダイエットが有効であると思う(例えば済陽式、和田式など)。言い換えれば脂質さえ制限しておけば、ある程度の糖質を摂っても、がんの再発防止には十分に役に立つだろう。
しかし2020年07月04日の日記「骨転移がんの去勢抵抗性防止のために糖質制限は有効か?」で書いたように骨転移し去勢抵抗性になるような悪性度の高いがんは糖質を餌にするようになるので(FDG-PETで光ることから裏付けられる)、糖質の摂取に注意しなければならない。
もちろん、脂質も制限するに越したことはない。血中の脂質を減らすには、(1)総コレステロール値を減らす。これには飽和脂肪酸の摂取量を減らすこと、具体的にはラード、ヘット、バターといった固形の油脂を食べないことである。(2)血中のトリグリセリド(中性脂肪)値を減らす。このためには糖質の摂取量を減らす必要がある。炭水化物、果物、飲酒を減らす。
結局何が言いたいかというと、いままでしてきた糖質を制限するダイエットは続けるべきだが、飽和脂肪酸もしっかりと制限する必要があるようだ。
糖質も脂質も制限するとエネルギー不足になると予想されるが、そうなったときまた考える。
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