牛乳や乳製品は大丈夫?--インスリン様成長因子 2020年08月29日

インスリン様成長因子−1(IGF−1)というホルモンがある。インスリンに非常に良く似た構造を持ち、細胞増殖・分化の誘導、細胞死の抑制を促進する因子で、肝臓から分泌される。また、インスリンがIGF−1の産生を増加させることも知られている。IGF−1は外からも摂ることもでき、牛乳や乳製品(チーズ、生クリーム、バター、ヨーグルト)などに多く含まれる。

生殖系の細胞、例えば乳腺細胞や前立腺細胞は、IGF−1受容体を多く持っており、IGF−1を取り入れて、母乳を分泌したり精液を分泌したりする。

生殖年齢を過ぎた人、つまり老境に差しかかった男性がこのホルモンを多く摂ると、非常にまずいことになることが想像つく。すなわち、IGF−1は、もう成長する必要のない前立腺細胞においてがんの発生を促してしまうのである。

前立腺がん細胞がIGF−1を取り込む作用を説明すると、IGF−1はがん細胞の細胞膜にあるIGF−1受容体に結合する。IGF−1受容体は細胞内のインスリン受容体基質IRSに結合し、インスリン受容体基質IRSを通してがん細胞の増殖、浸潤、転移を促す信号をがん細胞のDNAに伝える。このあたりアンドロゲン受容体の働きとそっくりだ。

乳製品、牛乳、チーズ、ヨーグルトの摂取量と前立腺がんリスクとの関係を調べた国立がん研究センターの多目的コホート研究がネットに載っていたので、紹介する。

https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/317.html

「平成7年(1995年)と平成10年(1998年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所(呼称は2008年現在)管内にお住まいだった、45~74歳の男性約4万3千人の方々を平成16年(2004年)まで追跡した調査結果にもとづいて、乳製品、飽和脂肪酸、カルシウム摂取量と前立腺がん発生率との関連を調べました。
乳製品、牛乳、チーズ、ヨーグルトの摂取量によって4つのグループに分けて、最も少ないグループに比べその他のグループで前立腺がんのリスクが何倍になるかを調べました。その結果、乳製品、牛乳、ヨーグルトの摂取量が最も多いグループの前立腺がんリスクは、最も少ないグループのそれぞれ約1.6倍、1.5倍、1.5倍で、摂取量が増えるほど前立腺がんのリスクが高くなるという結果でした。

この研究に対して、業界団体(一般社団法人Jミルク)の反論が載っているので、たいした内容でないが、リンクをあげておく。

結局、乳製品が前立腺がんを発生・進行させる機序、および国立がん研究センターのコホート研究の調査結果を考慮すれば、前立腺がんの進行を遅らせ、再発を防止するためには成長因子IGFー1や飽和脂肪酸を含む牛乳や乳製品は、好んで摂るべき食材ではないと言える。

さらに、米国では乳量の増加を目的として、乳牛にウシ成長ホルモンを投与することが許可されており、そのような牛の乳中のIGF−1濃度は通常より高いことが報告されている、そうである。

そこで前立腺がん患者である私としては、牛乳はもとより、乳製品(チーズ、生クリーム、バター、ヨーグルト)も、糖質と同様、摂取を控えるべき食材と位置づけている。どうしてもというときは、国産の牛乳から作った乳製品であることを確認して、少量摂取するようにしている。


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