骨転移がんの去勢抵抗性防止のために糖質制限は有効か? 2020年07月04日

前の日記で「がん細胞は糖質を餌にしている。これはFDG-PET検査でブドウ糖液を注射するとがん細胞のあるところが光ることから明らかである」と書いたが(2019年10月30日)、前立腺がんに限って言えば、あまり光らないそうである。これは前立腺がんは増殖力が弱くて、ブドウ糖を取り込む量が少ないからだそうである(Cancer Channel: Japan Cancer Forum 2019 中村 和正先生 前立腺がん 転移の早期発見・治療のために放射線でできること

https://www.youtube.com/watch?v=UcsYswyMLrU

の11分あたり)。

前立腺がんが糖をあまり取り込まないならば、こうして頭がフラフラになるのを我慢してまで糖質制限食を続ける意味はない、かもしれない。

しかし、骨転移した前立腺がん、特に去勢抵抗性になった前立腺がんに限って言えば、糖質の制限は有効であると思う。その理由を説明しよう。

ネットをいろいろ調べてみると、骨に転移し去勢抵抗性になった前立腺がんの画像診断をする場合、骨シンチグラフィだけでなく、FDG-PET診断を実施することは、よく行われているようである(保険適用の有無は不明)。

前立腺診療ガイドライン(2016)の骨転移治療の部、CQ1『前立腺癌骨転移の画像診断にはどの方法(モダリティー)が推奨されるか? 』には「18F-FDG-PET(PET/CT を含む)に関しては,骨シンチグラフィーと比較して感度,特異度ともに良好であるという報告が散見される。」という記載がある。

FDG-PET診断の前立腺がんへの有効性を調べた他に論文があるかどうか、探してみると、「18F−FDG PETが転移巣検索に有用であった前立腺がんの2例(平成20年2月2日)」という防衛医大の報告が見つかった。http://kkse-nm.kenkyuukai.jp/images/sys%5Cinformation%5C20110329105045-F5D00E931FE055FA2AC297447FBD5113AFA1C11D21CE0D7379338E09CBB7EC85.pdf

そこには、一般に、前立腺癌細胞の糖代謝はそれほど高くないこと、18F-FDGの尿中排泄が読影の妨げになることなどの理由により、前立腺癌患者における18F-FDG PETの有用性に限界がある。しかし、Gleason Score高値で、PSA値が急に上昇した前立腺癌患者2例において、18F-FDG PET/CTは転移巣把握に有用であると思われた、といったような内容が記載されている。2例とも骨転移のある部位で痛みの発生している患者さんである。PSA値が急に上昇したということは、ホルモン薬が効かなくなった進行がんである。

さらに「FDG-PETによるがん骨転移の診断」
という解説サイトも見つけた。次のような報告を紹介している。
「造骨型骨転移が多い前立腺がんでは、感度の点で、骨シンチグラフィーの検出感度がFDG-PETより高い。しかし、骨シンチグラフィーだけが描出した前立腺骨転移巣は、PSA値が上昇したにもかかわらず6週間のあいだ変化しなかった。一方、FDG-PETが描出した骨転移巣はすべて増大していた。これは、FDG-PET陽性、つまりブドウ糖を好んで取り込む骨転移巣は、明らかに活動性が高いことを示唆する。」

結局、骨転移した去勢抵抗性前立腺がんに対してFDG-PETは有効な検査法であることは間違いない。

したがって、骨転移した去勢抵抗性前立腺がんは、増殖するのに、ホルモン感受性前立腺がんよりも多量に、血液からブドウ糖を取り込む、と考えられる。

であるとすれば、私の言いたいことは、去勢抵抗性がんの発生を未然に防ぐには、つまりmCRPCにならないためには、そうなる前、つまりがんがホルモン感受性のときから糖質制限ダイエットを始めておくことが有効なのではないか、ということである。去勢抵抗性になった人、なってまだ期間の浅い人も同じだと思う。


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