ホルモン治療をやるとCRPC(再燃)は避けられないのか? 2020年09月23日
私は病気発覚後、ホルモン感受性のうちからアビラテロン(ザイティガ)を飲み始めて、いま9ヶ月になる。これからも暫くはこの薬を飲み続けていくことになろう。
(用語解説)転移のあるホルモン感受性前立腺癌(mHSPC);転移のない去勢抵抗性前立腺癌(nmCRPC);転移のある去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)
世の中では、ホルモン療法をやっている人はいずれ去勢抵抗性(CRPC)になり(再燃し)、抗がん剤のお世話になるに違いないと、まことしやかに噂されている。ほんとうにホルモン療法をやると必ず再燃するのか、再燃を免れる場合はないのか❓ そこで、再燃率を調査した結果がないかと、インターネットで調べてみると、次のサイトが出てきた。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmoa1704174
LATITUDE試験:「ハイリスクの転移性前立腺がんと初めて診断された前立腺がん患者に対する一次療法として、アンドロゲン除去療法(ADT)にザイティガ+プレドニゾロン(商品名プレドニン)を併用投与した第3相無作為化比較試験(LATITUDE)」
これは、ホルモン感受性前立腺がん転移例(mHSPC)の高リスク例(Gleason score 8以上、3カ所以上の骨転移、測定可能な内臓転移病変のうち2つ以上の条件を満たす。私もこれに該当している)に対するアビラテロンの初期投与の有効性を調べるため、日本を含む世界的規模で行われたランダム化比較試験である。日本の行政当局はこの試験の結果に基づいて、ホルモン感受性前立腺がんに対して、試験と同じ条件でのアビラテロンの一次使用を承認している。
試験にあたっては、2013年2月12日から2014年12月11日に1199例が登録され、本解析のデータカットオフ日は2016年10月31日、追跡期間中央値は30.4カ月であった。1199例のうち、597例がADT+ザイティガ+プレドニゾン併用群、602例がADT単独群(プラセボ群)に割り付けられた。
ここで、試験に出てくるアンドロゲン除去療法(ADT)とは、リュープリン、ゾラデックス、ゴナックスなどの注射または除睾術のことである。日本では、これにビカルタミドまたはフルタミドと併用するCAB療法が一般的だが、欧米では、注射または除睾術の単独療法が一般的に行われているようである。
結果
前立腺特異抗原(PSA)の上昇(再燃)を治療失敗とみなし、再燃を免れている確率を時間とともにグラフ化している。図(オリジナル論文のFig. 2Bにあたる)の黒い折れ線はADT+ザイティガ+プレドニン併用群、グレーの折れ線はADT単独群を示す。
図から明らかなように、併用群では半分の被治験者が再燃するようになるまで33.2ヶ月、単独群では半分の被治験者が再燃するまでの期間が7.4ヶ月と、圧倒的な差がついている。
併用群を示す黒い腺のグラフを見ると36ヶ月あたりから横に寝ているので(この部分をカンガルーテールと云う)、併用群の人は、36ヶ月を過ぎて再燃していなければ、この先、長く再燃から免れるかもしれないことが示されている。つまり、約半分の人が「幸い組」に入れるかもしれないのである。これは「ホルモン治療を続けているといつか再燃する」と世の中で云われている常識をひっくり返すのに足りる結果である。
一方単独群では、7.4ヶ月を過ぎても再燃する者はまだ増え続け、最終的に36ヶ月時点で再燃を免れる割合が約10%になって安定する。つまり、約一割の人のみが再燃を免れることができるのである。時遊旅さんや、癌克人さんは、この一割の中に入った祝福すべき人たちだろう。
結局、私のようにADT+ザイティガ+プレドニンを併用している患者は、50%の確率でCRPCになるのを免れることができるかもしれない。私はこれからも、被験者の人たちと同様、少なくとも36ヶ月3年間にわたって、根をあげることなく、いまのホルモン療法を続けてみようと思う。
なお、単独療法に関して、日本人は欧米人と比べてホルモン療法が効きやすいと言われているし、またADT単独療法よりもCAB療法(ビカルタミドやフルタミドを併用する療法)をする人がほとんどである。なので日本人の場合、カンガルーテール10%は低すぎであって、ほんとうはもっと高いのではないかと思う。
次に、私の知りたいことは、ホルモン感受性転移性前立腺がん(mHSPC)の患者が「幸い組」に入ることができるかどうかを、早めに(例えば薬を投与開始して数ヶ月くらいで)予想する方法があるのかどうか、である。これについては、さらに調べてみることにする。またエンザルタミド(イクスタンジ)の初期投与についても、同じような試験結果が出ているので、そちらのほうも勉強してみたい。
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